◆エレキ三味線で老いも若きもロックンロール――。荒川区内の三味線修理業者が、エレキギターよろしく、音色をアンプ経由でスピーカーから発する「エレキ三味線」を開発した。三味線独特の皮の響きを殺さずに、爆発的なロックなどの音響にも負けない音量が出せるため、三味線の活用範囲が大幅に広がりそうだ。 現在、意匠登録と実用新案の特許を出願中だが、この新楽器、早くもプロから引き合いが相次いでいる。
【読売新聞1990/6/24】序文より
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◆アンプを使ってスピーカーから音を出す「エレキ三味線」を荒川区内の三味線販売店が開発した。独特の革の響きが鮮やかに出るうえ、音量を自由に調整できるのが特徴。エレキギターなどの電気楽器と共演する「三味線ロック」で知られる浪曲師、国本武春さん((29)=葛飾区在住=)が27日に荒川区東日暮里5の日暮里サニーホールで、初めてこの三味線を演奏する。シンセサイザーやギターにまじって、どんなハーモニーを奏でるか――。
【毎日新聞1990/7/21】序文より |
◆日本の伝統楽器・三味線。欠点はパワーが弱く、大劇場での演奏や洋楽器との合奏に不向きなことである。この欠点を、東京・尾久で『三味線かとう』を経営する加藤金治さん(43)と、メカにくわしい山口繁夫さん(39)の義兄弟が克服して、パワーアップした新しいエレキ三味線を作り上げた。“新兵器”は三味線ロックの『国本武春バンド』で初公開され、洋楽器にひけをとらない威力ぶりをいかんなく発揮した。
【1990/8/4東京新聞 いま古典が面白い】序文より
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◆チン、トン、シャンとつま弾けば江戸情緒をかもしだす三味線。それだけに、現代を表現するのは難しい楽器といわれてきた。その三味線が今、純邦楽界のバンドブームを背景に、新しい動きを見せ始めている。変身の助っ人として登場したのは世界に冠たる日本のテクノロジーだ。
今年初め、東京・秋川市で開かれた青空コンサート「TAKIO唄さがしの旅」は、伊藤多喜雄バンドの木下伸市が弾く津軽三味線で開幕した。三味線をストラップでつるし、立って演奏する姿は、ロックバンドのギター奏者と変わらない。
木下が使っているのは一昨年開発されたエレクトリック三味線だ。三味線は四畳半の楽器、生の微妙な音は十メートルも離れると聞こえないといわれる。パーカッションやキーボードと互角の共演は難しかった。
木下はこれまで、サックス用の小型マイクを胴に付けていた。しかし、ボリュームを上げると今度はばち音ばかりが際立った。限りなく三味線に近い大きな音は、演奏家共通の永年の夢だったという。
その夢をかなえたのが、エレクトリック三味線だ。開発したのは東京・荒川区の三味線の店、三味線かとう。音の振動を表革の裏につけた振動ピックアップで拾い、内蔵のプリアンプで増幅,コードでミキサーにつなぐ。三味線音楽では音と音の間も重要な要素となるため、胴板に金属を埋め込み、ノイズ処理も入念に施した。その結果、姿は三味線だが音量が大きく、しかも音をひずませるなど音響効果器が使え、コマ位置を変えて、胡弓や三線も表現できる三味線が誕生した。値段が手ごろなのも魅力だ。
三味線ロックの国本武春や「ザ・家元」らの若手ばかりか、ここ二ヵ月、本條秀太郎、西潟昭子といったベテラン奏者が演奏会で用い、エレキ旋風を巻き起こしている。
西潟は昨年十二月の演奏会で三枝成彰作曲の『LaLaLaLaLa』にこの三味線を使った。一九七七年に作られた曲だが、邦楽情報誌「邦楽ジャーナル」の田中隆文代表によれば、「これまではばち音ばかりが響いた。エレクトリックの登場で初めて、曲本来の姿が聴衆に伝わった」という。――以下省略――
【日本経済新聞1992/1/20】より |