『内外タイムス』1995年9月9日刊より
とく得情報
三味線と和太鼓画期的な初共演

 邦楽に新しい動きがある。三味線と和太鼓の共演。三味線の音が太鼓に消されてしまうため、今までなかった組み合わせだ。この共演を可能にしたのが、東京・荒川区尾久にある三味線店、「三味線かとう」だ。
 5年前、同店主人の加藤金冶さんと義弟の山口繁夫さんが共同制作をしたエレクトリック三味線は三味線の生の音を殺さず、機械で大きな音を出すことを可能にした。演奏家はこぞってエレクトリック三味線を求め、三味線の可能性が広がりその分だけ邦楽の世界が広がったというのだ。かとうでは定期的に店を開放して、ちとしゃん亭と名付けた演奏会を行っている。下町に流れる三味線の音色にひかれて集まるファンは多い。毎回増えるファンの要望に答えて、去年から大ホールでの特別企画を行っている。
 今年は、国際的に活躍する和太鼓演奏家、林英哲氏と津軽三味線ロックを生み出した木下伸市氏の共演が、同区のサンポール荒川で行われた。これが、世界初の、和太鼓と三味線の共演になった。
 「企画した私たちが、一番興奮していたんですよ」。自分の体よりも大きな和太鼓を、力いっぱいにパチでたたきつける林氏。険しい表情で林氏の太鼓に迫る勇いで三味線を鳴らす木下氏。2人の男が繰り広げる世界に、約800人の観客は皆、圧倒されていた。「日本楽器の組み合せで、新しい音楽が生まれる。その時に、聴いている人が、ああ私は日本人なんだなあ、って感じられれぱ最高だね」と加藤さん。
 演奏風景に、「久しぶりに日本の男に出会った」と興奮して語る女性が何人もいた。
 伝統楽器から新しい音楽が生まれた。そしてその音楽にはどこか懐かしさが漂っている。東京下町で行われるちとしゃん亭。懐かしく、新しい音色を求めて、秋の夜長を過ごしてはいかが。問い合わせ、03(3892)6363

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