両雄がっぷり四つで聞かせた
津軽じょんがら三味線バトル

 ジャカジャーン♪♪ンダ 何だ 青森だ 津軽だ じよんがら三味線だ!只今、絶好調の津軽三味線チャンピオン同士が東京でがっぶり四つに組んで激突。7月9日夜、東京・荒川区「日暮里サニーホール」で「津軽三味線・佐藤通弘vs木下伸市・TOKYO決戦」(主催・三味線かとう)が催された。両者ともに津軽三味線全国大会2年連続優勝の実力者。会場のファンは白熱したじょんがら三味線のビートに酔いしれた。


 ジャカジャーン♪♪ オイラが初めて、身近に「津軽じょんがら節」を聴いたのが、テケテケテケ♪♪ベンチャーズの名曲「ダイヤモンドヘッド」「パイプライン」が流行した項。エレキブームが到来し、日本勢では「寺内タケシとブルージーンズ」が、ベートーベンの「運命」と一緒にエレキで「津軽じょんがら節」を軽く聞かせてくれたもの。
 その後、ちょっぴり青春し「いちご白書をもう一度」の頃。今度は津軽三味線の泰斗・高橋竹山先生がビロ〜ンと登場。「津軽よされ節」「津軽あいや節」を正調で聞かせてくれた。以来、20数年。
 今でも、仕事に、愛に、二日酔いに疲れた時は、一人、静かに竹山先生……。
津軽三味線業界も日進月歩の勢いで、竹山先生ほか諸先輩の技と音色を聴き、修業し、育った後輩たちが見事に芸能者として一本立ちの昨今。今回の「津軽三味線チャンピオンTOKYO決戦」で相まみえた佐藤通弘、木下伸市の両雄のバチさぱきも、なかなかのものだった。
 第一部、木下が最初に登場。持ち曲は@勇往邁進A羽衣B競奏曲〈無常〉Cデジャブ序曲〈回想〉D天を仰いで
 木下は普投、民謡歌手・伊藤多喜雄のバンドで三味線を担当。自らのバンド「竜宮」でもロック演奏を手掛けている。この夜、リーゼントスタイル、ブルーの上下スーツで登場。「競奏曲〈無常〉」など、高昔と早弾きに特徴のあるロックンロール風のバチさばきだっだ。
 続いて登場した佐藤の持ち曲が@弘前城桜吹雪Aねぷた〜ねぶたBタ陽の津軽三味線C三味線ポルカDジョンから元気
 佐藤は普段、渡辺香津美らジャズ演奏家たちとの交流がある。「弘前城桜吹雪」などは、バック演奏の尺八、ウッドベースと三味線が心地良く調和。ジャズっぽい乗りで聞かせた。「タ陽の津軽三味線」も、尺八との掛け合いが静かで、ゆったりしたいい曲だ。
 後半の第二部。ソロで木下が「津軽おはら節」「津軽あいや節」の2曲。佐藤が「津軽音頭」「津軽三下り」の2曲。
 かたや木下は、高音、早弾き、哀調が持ち味。こなた佐藤は、野太く、ねぱっこく、力強さが持ち味。ウーン、両雄、甲乙付け難い凄腕だ。ラストは両雄の、じょんがら合戦となり、ジャブ、ストレート、フック、アッパーカット。まるで、音のボクシングであった。
  両雄、技の限り、カの限りを尽くした合戦は、互角の引き合けと聞いた。ジャカジャーン♪♪


コンサートの後半 ついに“竜虎”相打つ決戦、ボクサーに例えるならば木下(左)がジャブ ストレートの鋭いテクニシャン 佐藤(右)がハードパンチのファイターだ

戦い済んでお互いに相手をたたえてがっちりと握手 大好評で8月4日夜 同じ「日暮里サニーホール」での追加公演が決定した

本誌/直島正男、撮影・出版写真部/小林努
『毎日グラフ』1993年8月8日号

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